クリニックに事務長を新しく雇用したけど、一体何を頼めばいいのかお悩みの院長もいらっしゃるのではないでしょうか?事務長は決して事務担当者ではありません。今回は、クリニックの事務長が行うべき「具体的な業務」についてお伝えしていきます。

  • 事務作業や雑用雑務など、バックオフィス業務全般を実行する。
  • スタッフの採用から育成など、マネジメント領域を実行する。
  • 集患・増患対策、自費対策など、マーケティング領域を実行する。

バックオフィス業務からクリニック運営を支える

歯科・医科・美容クリニックの事務長が行うバックオフィス業務

事務長はクリニックの運営を円滑に進めるため、バックオフィス業務全般を管理・実行します。人事、労務、経理、総務といった多岐にわたる業務を担当することで、院長が診療や経営の重要な意思決定に集中できる環境を整えます。

人事業務

事務長はクリニックにおける人事業務を管理・実行します。クリニックによって整備されていない領域・業務が多々あります。その際は、院長の方針のもと仕組みを構築していき、クリニックおよびスタッフが成長できるようにサポートしていきます。

採用活動 近隣競合調査、募集要項の作成、掲載媒体の選定、業者折衝業務、求人原稿作成、母集団形成、応募者対応、書類選考、見学・面接対応、内定連絡、内定者フォローなど、採用活動に関わる業務全般を管理・実行します。
スタッフ管理 新入職スタッフの受入れガイダンス、定例ミーティング運用、1on1、メンタルフォロー、階層別スタッフ研修、評価業務、人事異動・配置、福利厚生など、スタッフ管理に関わる業務全般を管理・実行します。
組織化 人事評価制度構築・運用、育成プログラム構築・運用、自社カルチャーの構築・運用、院内マニュアル制作・運用、コミュニケーションツール選定・管理など、組織運用に関わる業務全般を管理・実行します。

労務業務

事務長はクリニックにおける労務業務を管理・実行します。クリニックによって一部業務を社労士事務所や会計事務所などへ外注している場合もあります。その際は、各事務所の方と連携をとり、スムーズにクリニック運営ができるようにサポートしていきます。

入退職手続き 新入職スタッフの雇用契約書、必要書類の準備、社会保険・その他保険の加入手続き、退職届の確認、退職時の書類発行、社会保険・その他保険の資格喪失手続きなど、入退職に関わる業務全般を管理・実行します。
勤怠・給与 シフト作成、勤務時間集計、労働時間管理、有給・休暇管理、行政対応、給与計算、保険料・税金計算、各種税金納付、年末調整など、クリニックの勤怠管理・給与計算に関わる業務全般を管理・実行します。
労務管理 労働者名簿管理、賃金台帳管理、出勤簿管理、就業規則に関わる業務、安全衛生管理、福利厚生運用、労働トラブル対応(ハラスメント含む)など、クリニックの労務管理に関わる業務全般を管理・実行します。

経理業務

事務長はクリニックにおける経理業務を管理・実行します。クリニックによって一部業務を会計事務所などへ外注している場合もあります。その際は、各事務所の方と連携をとり、スムーズにクリニック運営ができるようにサポートしていきます。

入出金管理 日々の売上や支払いの確認、銀行への入金処理、取引先への振込処理、現金出納帳管理、請求書管理、スタッフの経費精算・システム運用など、クリニックの入出金に関わる業務全般を管理・実行します。
決算補助 収支報告書の作成、収益・コスト分析、会計事務所(税理士)との連携で決算準備、税務に関する資料準備、納税額の確認と支払など、主に会計事務所(税理士)と連携して、決算業務をサポートします。
予実管理 年間予算の作成、予実管理(予算と実績の比較)、クリニックの各種データ分析、売上改善・向上策の提案、コスト削減策の提案など、クリニックの予実管理に関わる業務全般を管理・実行します。

総務業務

事務長はクリニックにおける総務業務を管理・実行します。クリニックによっては現場スタッフが管理・実行している場合もあります。その際は、現場スタッフと連携をとり、スムーズにクリニック運営ができるようにサポートしていきます。

各種書類作成 行政への届出書作成・管理。取引先との契約に関わる書類作成、クリニックで使用する書類作成、取引先への季節の挨拶文作成など、クリニックの各種書類作成に関わる業務全般を管理・実行します。
備品管理 備品の発注・在庫管理、医療消耗品の発注・在庫管理、各種在庫リスト作成、棚卸し、取引先対応、業者の選定など、クリニックで使用する備品・消耗品の在庫管理と発注を管理・実行します。
その他 清掃業者との折衝業務、設備点検の実施、安全基準の確認・改善、各種システム運用・管理、システムエラー対応、クレーム対応など、クリニックの運営を支える業務を幅広い領域で管理・実行します。

集患・増患対策のスペシャリストとして患者数の増加を図る

歯科・医科・美容クリニックの事務長が行うマーケティング戦略

事務長はクリニックの集患・増患対策においても重要な役割を果たしており、特にWeb戦略を駆使して、クリニックの認知度向上と患者数の増加を目指します。クリニックの売上を向上させるために幅広い領域で業務を行います。

Web・SNSマーケティング

事務長は集患・増患対策の一環としてSEO対策やMEO対策、SNS運用などを実行し、クリニックのオンライン上での存在感を高めて、地域の患者獲得につなげます。事務長の保有スキルによって、できる・できないがはっきりと分かれる領域です。

SEO対策 サイト構造の整備、内部リンクの整備、外部リンクの獲得、コンテンツの最適化など、検索エンジンでの検索結果上位表示を狙い、クリニックの認知度向上と患者数の増加を目指します。
MEO対策 Googleビジネスプロフィールの最適化、投稿機能の活用、口コミの管理・促進など、Googlマップでの検索結果上位表示を狙い、地域におけるクリニックの認知度向上と患者数の増加を目指します。
SNS運用 プラットフォーム選定、コンテンツの企画・制作、フォロワー対応など、クリニックのターゲット層・プラットフォームの特性に合わせて、クリニックの認知度向上と患者数の増加を目指します。
広告運用 リスティング広告の活用、ディスプレイ広告の活用、MEO広告の活用、SNS広告の活用、効果測定・改善など、広告のターゲティング精度を高めることで、効果的に患者数の増加を目指します。

院内マーケティング

事務長はオンライン上の施策実行だけでなく、院内における集患・増患対策を企画・実行します。現場スタッフの協力・合意形成が必要不可欠なため、コミュニケーション力が必要とされるため、できる・できないがはっきりと分かれる領域です。

企画・運用 キャンペーンの企画・運用、イベントの企画・運用、カウンセリングシステム構築、システム連携設定など、院内におけるマーケティング活動を企画・運用を行い、患者数の増加を目指します。
プロモーション 紹介制度の導入、掲示物やチラシを活用した告知活動、患者教育(情報提供)など、既存の患者さんに対してプロモーション活動を行い、新患の獲得やリピーター獲得を目指します。
各種ツール制作 カウンセリングツールの制作、診療ガイドブックの制作、患者管理システムの整備など、クリニックの業務効率化や患者対応の質を向上させ、患者満足度向上を通じて患者数の増加を目指します。

クリニックの単価・自費対策を担い売上を向上させる

事務長はクリニックの単価向上や自費治療の促進においても重要な役割を果たしており、クリニックにおける限られたリソースを活用しながら単価・自費率の向上を目指します。クリニックの売上を向上させるために戦略を立て、実行していきます。

競合分析 診療メニュー調査、価格調査など、リサーチを通じて自院の強みと比較。競合が提供していないサービスや自院が提供できていないサービス、価格帯を見つけ、差別化を図り、クリニックの売上向上を目指します。
診療フロー カウンセリングシステム構築、マニュアル作成、スタッフトレーニング実施、各種ツール制作など、患者さんとスタッフのコミュニケーション機会の提供と質の向上を図り、クリニックの売上向上を目指します。
自費集患 プラットフォーム選定・業者折衝、サテライトサイト制作、LP制作、SNS運用、キャンペーン企画・運用など、自費患者の集患に特化した施策を実行し、クリニックの売上向上を目指します。

院長の良き理解者でありパートナー

歯科・医科・美容クリニックの事務長は院長のビジネスパートナー

事務長は経営者である院長の良き理解者でありパートナーでなくてはなりません。院長が目指す方向へ共に進んで行く存在です。これは「YESマン」ということではなく、時には院長の間違いを指摘したり、アドバイスを提供することが求められます。

院長のビジョンを共有する

事務長は単なる業務のサポート役ではなく、院長のビジョンを深く理解し、同じ目標に向かって進むパートナーです。クリニックの成長戦略や長期的な目標を共有することで、日々の意思決定が院長の考えと一致した方向に進むようにサポートします。

  • スタッフとの定例ミーティング

    クリニックの目標や現状の課題について定期的にスタッフと共有し、意見交換を行います。これによって、スタッフ全員が目指す方向を理解し、一体感を持って業務に取り組めるように促進します。
  • 問題解決力

    クリニックの日々発生する課題に対して、迅速かつ的確に対応するための問題解決力が重要になってきます。論理的思考や柔軟な対応と判断力が求められます。
  • スタッフとの1on1ミーティング

    個々のスタッフと1対1で話す場を設け、悩みや提案を直接聞きだす機会を持ちます。これによって、スタッフが抱える問題を早期に把握し、解決策を一緒に考えることができ、院長のビジョンに沿った働き方を促進します。
  • 朝礼や終礼での発信

    朝礼や終礼を活用し、クリニックのビジョンや日々の目標を再確認します。院長や事務長が直接メッセージを伝えることで、スタッフがビジョンを再認識し、日々の業務に前向きに取り組む姿勢を育てます。
  • ビジョンをもとにした目標設定と進捗確認

    各部門やスタッフごとに具体的な目標を設定し、その進捗を定期的に確認します。目標がビジョンと一致しているかを確認しながら、必要に応じて軌道修正を行っていきます。

こうした取り組みを通じて、事務長はクリニックのビジョンをスタッフに浸透させ、全員が同じ方向に向かって進む環境を整えます。院長が一人で抱えがちなプレッシャーを軽減し、共に悩みながらも着実に前進できる体制を築いていきます。

院長の意思決定をサポートする

クリニック経営には迅速で的確な意思決定が求められますが、その基盤となるのが現場のリアルなデータと状況の把握です。事務長は、患者同行、スタッフの状況、コスト管理などの現場情報を収集し、院長が必要とするデータを整理・分析して報告することが必要です。

  • 患者データの収集

    患者の来院頻度、新患の増加傾向、自費率の推移、予約キャンセル率などのデータを定期的に取集・分析します。
  • スタッフの業務状況

    スタッフの勤務状況、業務負荷、休暇の取得状況などをモニタリングし、必要に応じて業務の再調整を行います。
  • コスト管理

    無駄なコストの削減や効率的な資金運用の提案を行います。設備投資や備品購入の際には、費用対効果を算出し、必要性や投資額の妥当性を院長に分かりやすく伝えます。
  • 現場情報の取りまとめ

    患者さんやスタッフからの情報を定期的に集め、改善点を抽出。この情報をもとに、クリニックのサービス向上や働きやすい環境作りのためのアクションプランを提案します。
  • 意思決定のための資料作成

    院長の意思決定をサポートするため、経営指標や業績報告をまとめた資料を作成。売上分析、コスト分析、スタッフの評価など、視覚的に把握できるよう作成します。

これらのサポートによって、院長は現場の実情を踏まえたうえで、迅速かつ的確な意思決定が可能になります。現場をしっかりと把握することで、リスクを最小限に抑えクリニックの成長を推進していくことができます。

院長の負担を軽減する

院長が診療や経営に集中できる環境を整えることは、事務長の重要な使命の一つです。事務長が院長の負担を軽減し、経営のパフォーマンスを最大化するための取り組みは、クリニック全体の効率を大きく左右します。

  • バックオフィス業務の効率化

    日常的な事務作業の中で、効率化できる部分を抽出し、業務プロセスの改善を進めます。多くのクリニックはバックオフィス業務が整備されていないため、効率化を実現するだけで大きなインパクトを与えることが可能になります。
  • スタッフの業務状況

    スタッフの勤務状況、業務負荷、休暇の取得状況などをモニタリングし、必要に応じて業務の再調整を行います。
  • スタッフ採用と育成の一元管理

    スタッフの採用活動や育成計画を一元管理し、適切な人材の確保と教育を行います。事務長がこのプロセスをしっかりと管理することで、院長は採用面接やスタッフの教育にかける時間を最小限に抑えることができます。
  • スタッフ間のトラブル対応

    スタッフ同士のトラブルや意見の食い違いを迅速に解決することも重要な役割です。スタッフの声を聞き、問題の早期発見と対処を行い、スタッフのモチベーション維持・チームワークの強化を図ります。
  • クレーム対応

    患者さんからのクレーム対応を行うことで院長の負担を軽減します。その後に、クレームの原因を分析し、再発防止策を立て実行。患者満足度向上にも寄与します。

これらの業務をしっかりと担うことで、院長の負担が軽減し、院長は診療や経営に集中できるようになり、クリニック全体のパフォーマンスを最大化することが可能になります。安定した経営基盤を築き、クリニックの成長を支えるあめに、事務長の存在は欠かせません。

まとめ

クリニックにおける事務長の業務をお伝えしました。しかし、これらの業務すべてを高い次元で実行できる人材は限りなく少ないのが現実です。また、事務長がいない多くのクリニックは整備されている業務が少なく、一から業務を整備・環境を構築していくことが求められます。つまり、事務長が軌道に乗るまで時間を要するということになります。限られたリソースの中で運営しているクリニックにとっては、事務長を育成することが困難なため、なかなか厳しいことかもしれません。

そうならないためにも、事務長を採用する段階で可能な限り、優秀な人材を獲得することが重要です。勤務しだしてからパフォーマンスを発揮できる人材を獲得する。これが最も重要な点です。優秀な事務長を上手く活用することができれば、院長の負担は軽減し、クリニックの成長が加速することにつながります。

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